問 放射を抑制する省エネの実現には、何が必要ですか?省エネの評価方法はありますか?
放射を制御するためには、放射熱の高い(もしくは低い)部材を特定する必要があります。夏期の室内の場合、一般的に天井面、南面・西面(窓面含む)で高温の放射熱が測定されます。冬期の室内の場合、一般的に天井面、北面、窓面で低温の放射熱が測定されます。窓面では、カーテン(放射率ε≒0.9)やブラインド(ε≒0.6)で遮蔽による放射熱の低減が図れますが、ガラス(ε=0.91~0.94)に比較して、窓付近の温度を反映した放射環境自体は、放射率εが低くなる効果しかありません。そこで放射率の低いアルミ(ε≒0.1)を用いた放射遮蔽シートをカーテン、ブラインドの代わりに活用します。
窓面への放射遮蔽シートの設置だけでなく、最上階の天井面への設置も有効です。更に、断熱層の薄い倉庫や事務所の壁面や天井面への設置も有効です。放射遮蔽シートを設置している状況の写真をしめします。天井面は全面に設置しますが、窓面は明かり取りのために上面を開けて設置しています。

次に、放射遮蔽シートの有り無しで、机上温度、天井表面温度と天井放射温度(簡易放射温度測定装置を使用)の時間変化を比較した例をしめします。

答① 放射熱の高い(もしくは低い)天井面に放射遮蔽シートを設置することで、天井からの放射熱を抑制することが可能となります。
そもそも放射遮蔽シートを設置しただけでは、省エネ効果を確認できません。そこで、放射遮蔽シート設置前後の放射環境、部材表面温度、空気温度、そして空調機(エアコン)の消費電力を測定することで、SET*と省エネ効果を評価します。
どちらの部屋も天井表面温度は26℃~29℃と変化し、机上温度は24℃~25℃と空調制御(エアコン設定温度は26℃)されています。机上で測定された天井放射温度は放射遮蔽シート無しの場合、25℃~26℃と変化し、机上温度より0℃~2℃高い傾向にあります。しかし、放射遮蔽シート有りの場合は、机上温度とほぼ同等です。
次に、天井放射温度とその他の面の放射温度を合成し、黒球温度計から平均放射温度を求める計算式から、13時の放射温度を求めます。放射遮蔽シート無しの放射温度は26.4℃、放射遮蔽シート有りの放射温度は24.0℃となります。次に、SET*を求めます。

放射遮蔽シート無しの場合、SET*は26.1℃となり、放射遮蔽シート有りの場合、SET*は24.9℃となりました。しかし、ここでは居住者がエアコン設定の変更をしていないため、放射遮蔽シート無しの部屋では快適とは言えません。そこで、放射遮蔽シート有りのSET*と同等にするためには、エアコン設定温度を24℃とし、机上温度が22.5℃、天井放射温度が25.5℃となるまで調整する必要があります。エアコン設定温度を2℃(26℃→24℃)下げるということは、それだけエネルギー消費が増えることになり、省エネに逆行することとなります。
答② 放射遮蔽シートを適切に設置し、設置前後の放射環境等を測定する必要があります。更に、空調機(エアコン)の消費電力を測定することで、SET*と省エネ効果を評価することが重要です。