問 放射面を特定するための簡易な放射環境測定方法はありますか?

 放射環境を測定するには様々な方法がありますが、測定結果をどのように活用するかによって、最適な測定方法を選択する必要があります。以下に放射温度環境のイメージをしめします。この例では、空調設定された夏期の室内壁面温度は26℃~32℃、冬期の室内壁面温度は16℃~24℃です。窓があれば、更に温度レンジは広がります。人体周りのカラー表示で放射温度をイメージしており、夏期の2階は30℃、1階は28℃、冬期の2階は20℃、1階は22℃程度です。

 このように室内の省エネを検討するための放射環境としては、壁、窓、天井、床、什器等から放出される放射熱を対象とすることになります。これらの対象とする部材の放射率と表面温度が既知の場合、測定点から各部材までの形態係数を求め、厳密に放射熱を求めることは可能です。しかし、各部材にも温度分布や時間変化があり、離散化したとしても膨大な計算が必要となります。そして、得られる結果は測定点の放射熱だけであり、現実的な測定方法でないことがわかります。
そこで、部材の放射率と表面温度や形態係数が不要である測定方法として、測定点で放射熱を直接測定する方法が有効となります。

答① 放射環境を放射面から測定点に向けて厳密に測定するためには、膨大な計算が必要なため、現実的ではありません。省エネ検討のための放射環境の測定に限定すれば、測定点で放射熱を直接測定する方法が有効です。

 放射熱を直接測定する方法として、黒球温度計を用いた測定方法があります。この測定方法は屋外で活用される場合が多く、室内での使用を想定していない部分もあります。
黒球温度計は、四周からの放射熱を吸収率の高い黒球表面で受け、周辺空気温度より、高く(もしくは低く)なる黒球内の温度を測定するものです。しかし、室内の放射環境を測定する上でどの面からの放射熱が高い(もしくは低い)かを把握できません。放射を抑制することで省エネを目指すためには、黒球温度計による測定方法は最適とは言えません。
そこで、室内の四面(天井、壁3面)の放射熱を簡易に測定する装置を開発しました(特許7430965号)。黒球温度計と簡易放射温度測定装置(スマートフォス【SMARTFOSU】)による測定状況の写真をしめします。

特許証(特許7430965号)

簡易放射温度測定装置は10㎝角のメッシュボックスの各面中心に黒体シートを設置し、その表面温度を熱電対で測定することで、放射熱を測定します。測定面は、夏期は天井面と東面、南面、西面、冬期は天井面と東面、北面、西面を対象とします。

答② 簡易放射温度測定装置(スマートフォス【SMARTFOSU】)を開発したことで、室内の四面(天井、壁3面)からの測定点への放射熱を測定することが可能となり、どの面を放射抑制すれば良いかを判断できるようになります。